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シンプル・ライフ

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「二人のガスコン」

女はみんな同じ ~「二人のガスコン」


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 村上春樹の作品のうち、最も異色なのはどれだろう?
 はい、古参読者ならわかりますね、「ノルウェイの森」です。
 作者自身が海外にいる間に出版され、帰国した折に、「なんでこんなに売れてるんだ?」と思ったそうな。
「ノルウェイ~」が他の作品とどう違うかは作者本人も書いてるし、恐らく春樹作品を三冊も読めば明白だろうけど、本筋と関係無いのであえて言うと、それは、「リアルな作品」と言う事だ。
 それゆえに、この作品は多くの読者のニーズを掴み、とくに女性に売れたのだと言う。
 作中、「ケーキ」に関する挿話がある。平たく言うと、男が女の子にケーキを買う。女の子は、せっかくのプレゼントに対して、「今日食べたいのはそのケーキじゃなかった」という。彼氏は平謝りに謝る。「そうか、間違えたぼくを許してくれ。今すぐ君のケーキを買ってくるよ」そして女の子は思う。「これが本当の愛なの」
 小学生も高学年になると、女子だけが教室に残ってスライドか何かを観て、男子は校庭でサッカーをする時があった。あのスライドが、人生の7不思議だと人は言う。
 ぼくは思う。きっと、「義務教育で習う事は全部嘘っぱちだ。あなたたちは正しいと思ったことの逆のみを選びなさい」みたいな事を習ってたんだ。
「メン・イン・ブラック」や、「トゥルーマン・ショー」みたいに、そういう侵略と虚偽の秘密が語られてたんだ。いや、「X-ファイル」の方が適切なのかもしれない。
 さて、何が面白いんだか女性に人気の江国香織氏の「ホリー・ガーデン」を読んだ。実に複雑で微妙な、女性同士の感情交流と再生が語られる作品だ。
ジャンルとしては、「ビッチ物」に入るだろう。「ショー・ガール」や、「渡る世間は鬼ばかり」と同じだ。邪悪な女がいて、邪悪な生活を送り、邪悪な幸せを掴む。もしかしたら、モダン・ホラーだったのかもしれない。
 さて、今回のお題の「二人のガスコン」佐藤賢一著である。ガスコンとはピレネー山の麓、ガスコーニュ地方生まれの男児を指す。本編ではかのダルタニャンと白井弁十郎こと、シラノ・ド・ベルジュラックの事だ。
 フランスの二大快男児が、フランス史上最大の謎、鉄仮面事件に迫るというの大筋だが、ここにそれぞれのヒロインが登場する。シラノと言えば言わずと知れた、「愛しの」ロクサーヌ。ダルタニャンの方は、マリー・ドゥ・カヴォワという夫人。
 で、この二人なのだが、どうやら件のスライド授業を受けているらしい。作中でも、完全な「人類を苦しめるために生まれた悪の生命体」ぶりをはっきしている。
 作中の言葉を借りれば、「自尊心ばかりで中味がなく、利巧ぶっているが愚かで、そのくせ一端ぶって甘ったれている」という事だ。
 やれやれ。
 中味が無いから自尊心が肥大するのだろうし、愚かだから誤魔化して利巧ぶるのだろう。そして、甘ったれてるから一端ぶるのだ。すべてはコンプレックスの裏返し。ただ、「現実に従う」事さえ受け入れれば分かるはずだ。
 中味が無ければ
入れる。愚かならそれを明らかにする。甘ったれてるなら、それを最大限活用する。「自覚」があればまだルールは通じるのだが、いかんせん悪の生命体、それは通じないらしい。
 結局、作中のどうしようも無い悪女は、自分を愛する者を疎み、現実を否定するために人生観の捏造に従事し、自分より劣った物に大物ぶっては挙句捨てられ、そのどうしようもなさ故に死んでゆく。全て自らが望んだ事としか言いようが無い。
 春樹、江国、佐藤賢一。恐らく、どこの書店でも平積みになっている作家だろう。だが、タイトルが変わり、時代設定が変わり、ストーリーが変わっても描かれている女は同じだ。
 これは、邪悪な生命体による人類の支配を、密かに伝えているのだろうか? あるいは、単に類型的なXX染色体を描いているだけなのだろうか? 
 いや違う。
 恐らく、邪悪は病気なのだ。そしてそれはウィルス性の物で、感染するのに違いない。ゾンビ映画みたいに。
 大変だ、このままでは、多くの女性が、何の個性もない、ただの邪悪なだけの生物になってしまう。
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